会社の電話に、0で始まらない番号から着信があった。11桁の数字が並んでいるのに、頭が0ではない。国内の電話番号の形をしていない。

私は築古5物件を自主管理しているだけの大家である。海外との取引はない。正規の国際電話がかかってくるとは思えなかった。

出なかった。それで終わりにしてもよかったのだが、この日は少し先まで調べることにした。

1件ずつ拒否していく運用は、100件で終わる

まず、使っている電話サービスの設定画面を開いて、着信拒否に何件登録できるのかを見た。

100件だった。

これを見た時点で方針が決まった。1件ずつ潰していく運用は成立しない。この手の電話は番号を変えてくる。100件が埋まったら、古いものを消さないと新しいものを入れられない。それは対策ではなく、番号を書き写す係になるだけだ。

だから、番号を1つずつ止めるのをやめることにした。かわりに「番号の頭」で止められないかを考えた。0800で始まる番号を全部止める、というような止め方である。

これは効く。ただ、危ない。切ってはいけない相手まで、まとめて切れてしまう。

半年分、567件を全部見た

私の会社の電話は、通話の履歴が半年分残る。567件あった。これを全部見た。

見たかったのは1件ずつの正体ではない。番号の頭ごとに、どういう電話が来ているかという分布のほうである。全部見ないと、線を引いていい場所が分からない。

こういうとき、記録を持っていることが効いてくる。私は物件の記録を全部自分で残すようにしているが、電話も結局は同じだった。残っていたから、後から数えられた。

頭の数字で、止めていいものと、いけないものが分かれた

数えた結果は、はっきり分かれた。頭で止めていいものは2種類だけで、残りは全部、止めてはいけないものだった。

0以外で始まる着信は9件あって、9件とも別の番号だった。しかも全部が1回きりで、全部が留守電につながって切れている。同じ番号は二度と来ない。つまり、1件ずつ拒否しても永久に止まらない種類の電話だった。ここは頭で止めるしかない。

0800も止めた。ここは件数ではなく、取引のある相手がその番号を使っていないという理由で決めた。うちは保証会社の窓口とやりとりをするが、そこは0800ではない。

止めなかったほうが、話としては大事だと思っている。

まず0120である。20件あった。フリーダイヤルだから営業だろうと思っていて、最初は止めるつもりでいた。

ところが録音が残っていたのは2件で、その2件が電気の契約内容の確認だった。建物の電気の話である。

本物の電力会社だったのか、名前を借りた営業だったのかまでは確かめていない。ただ、0120にこういう電話が乗ってくると分かった時点で、面で止めるという選択肢は消えた。

0570もそうだった。使っている保証会社の窓口のひとつが0570で始まっている。ここを止めたら、家賃の話が入ってこなくなるところだった。

03は9件あった。ただ、止めない理由になったのは、かかってきたほうではない。こちらから掛けたほうだった。半年のあいだに私が03へ掛けた先に、7社試した末に選んだ保証会社があったのである。向こうから掛かってきた実績はないが、督促や代位弁済で、いつ掛かってきてもおかしくない相手だ。

06は2件しかなく、そもそも面で止めるほどの量ではない。

結局、頭で止めたのは「0以外で始まるもの」と「0800」の2種類だけになった。あとは、正体がはっきりしていた4つの番号を1件ずつ登録した。

ただし、0以外のうち「1」だけは外している。うちの内線番号が1で始まるので、内線の着信まで止めてしまわないかが分からなかったからだ。おかげで9件のうち1件は、いまも通る。ここは影響を確かめてから足すことにした。

いちばん確かな見分け方は、留守電を残すかどうかだった

数えているうちに、頭の数字よりも確実な見分け方が出てきた。

留守電にメッセージを残すかどうか、である。

フリーダイヤルからの着信は、0120と0800と0570を合わせて29件あった。このうち、留守電に録音が残っていたのは3件だけである。残りの26件は、留守電に切り替わった時点で切っている。

1件ずつ登録した番号のうちの1つは、半年で14回かけてきて、一度もメッセージを残していなかった。かけて、留守電に切り替わって、切る。これを14回である。

留守電を残した相手のほうは、逆だった。物件の内見の希望、設備の点検、町内会費。どれも、こちらが折り返すべき電話だった。

用のある人は残す。用のない人は残さない。当たり前のことだが、履歴を全部並べるまで、私はこれを言葉にできていなかった。

これが分かってから、電話に出られなかったときの気持ちがずいぶん軽くなった。私は電話を切るのが苦手で、切り方を覚えるのに10年かかった人間である。出られなかったことを、ずっと引きずるタイプでもあった。残っていなければ、たぶん用はない。そう思えるようになっただけで、休みの日の着信音がすこし怖くなくなった。

面で切る前に、自分でかけてみた

登録が終わったあと、一つだけ確かめたことがある。

「0以外で始まる番号を止める」という設定が、0で始まる普通の番号を巻き込んでいないか、である。設定した本人が思っているとおりに動いているかは、実際に鳴らしてみないと分からない。

自分の携帯から会社にかけた。鳴った。もう一つ別の番号からもかけた。これも鳴った。

これで安心した。設定画面の表示を信じるのではなく、鳴るかどうかを自分で確かめる。当たり前のようだが、ここを飛ばすと、切れているのに気づかないまま何ヶ月も過ぎる。切れて困る電話ほど、切れたことに気づけない。

非通知は、件数ではなく気持ちで止めた

最後に非通知を止めた。

これは理屈ではない。半年で3件しかなく、しかも3件とも誰も出ていない。数字だけ見れば、止める必要はまったくなかった。

それでも止めた。非通知の着信があるというだけで、こちらの気持ちがざわつくからである。誰なのか分からない電話が鳴って、出られなくて、その後もずっと気になっている。あの時間が、本当に惜しかった。

件数では説明できない止め方だが、私はこれでいいと思っている。

それでも残る、公衆電話の穴

一つだけ、宿題が残った。

うちの入居者に、公衆電話から連絡してくる人がいる。実際に半年のあいだに、公衆電話から設備の故障の連絡が入っていた。

公衆電話は、記録の上では非通知と同じ扱いで残ることがある。つまり、さっき止めた非通知の線に、公衆電話が巻き込まれる可能性がゼロではない。

ここは調べきる前に手を止めた。近くに公衆電話がなく、実際に鳴らして試せなかったからである。公衆電話そのものが減っている以上、そこまで気にしなくていいだろうという判断をした。

ただ、この穴が残っていることは覚えておく。うちの物件は古い。電話しか窓口がないという人がいてもおかしくない。迷惑電話を止める作業は、その窓口を細くする作業でもある。

私が思っていること

この日やったことは、要するに「電話を減らす」ことだった。

ただ、大家の電話には、出なければならない電話と、出なくていい電話が混ざっている。混ざったまま鳴るから疲れるのであって、鳴る回数そのものが問題なのではない。

だから、面で切るときは、やっぱり怖い。0120を止めていたら電気の連絡が消えていたし、0570を止めていたら家賃の連絡が消えていた。どちらも、止めてから何ヶ月も経って気づく類のものだ。

半年分を全部見たのは、慎重だったからではない。全部見ないと、どこに線を引いていいのか分からなかったからである。9件だと分かったから止められたし、0120の録音を聞いたから止めずに済んだ。

数えるのに使ったのは1日の午後だけだった。それで、これから何年か分の着信が変わる。自主管理を続けるつもりなら、悪くない使い方だったと思っている。

この記事は、築古5物件を自主管理する私自身の経験をもとに書いています。

ABOUT ME
大家のタロウ
はじめまして、大家のタロウです。 相続でひょんなことから大家になって、もう10年が経ちました。最初は右も左もわからないまま、ずっと手探りでやってきました。 失敗も、焦りも、「え、こんなことが起きるの?」って出来事も、たくさん経験してきたので、せっかくだから記録しておこうと思ってこのブログを始めました。 難しいことは書けませんが、同じように悩んでいる大家さんの「あるある」や「参考」になれたら嬉しいです。よろしくお願いします。