「不動産投資は不労所得」は本当か。築古5物件・大家10年のリアル
「不動産投資は不労所得」。よくそう言われる。
家賃が毎月勝手に入ってくる。働かなくてもお金が増える。そういうイメージらしい。
私は築古5物件を10年、自主管理でやってきた。その立場から言わせてもらうと、これはかなり違う。不労どころか、手も足も頭も使う仕事だ。今日は、その中身を正直に書いておく。
引き継いだ当初に思っていたこと
私はこの物件を家族から引き継いだ。最初は、私もどこかで「家賃が入ってくる仕事」だと思っていた節がある。
でも、すぐにわかった。家賃は勝手に入ってこない。入ってくるようにするために、人が動いている。その人とは、私だ。
入居者が決まらなければ仲介店に頭を下げに行く。設備が壊れれば業者を手配する。お金の計算も、書類の管理も、全部やる。誰もやってくれないから、自分でやる。
24時間、電話が鳴る仕事
一番わかりやすいのが、電話だ。
自主管理だから、何かあればまず私に連絡が来る。時間は関係ない。夜でも、休日でも、鳴るときは鳴る。
しかも、電話に出ると長い。一度出れば、30分や1時間は当たり前だ。設備の相談から始まって、気づけば世間話になっていることもある。
私はやっと10年経って、「すみません、この後予定があって」と切れるようになった。それまでは、ずっと聞いていた。これも仕事のうちだと思っていたからだ。これのどこが不労なのか、私には今もわからない。
実は、税金が複層的にかかる
お金の話もしておく。不労所得という言葉には、支出の視点がすっぽり抜けている。
まず固定資産税。これは土地と建物にかかる税金で、毎年払う。感覚で言うと、家賃収入の1ヶ月分くらいが、そのまま固定資産税に消えていく。1年のうち1ヶ月分はタダ働き、と言い換えてもいい。
市街化区域なら、これに都市計画税が上乗せされることもある。さらに、賃貸経営で利益が出れば所得税と住民税がかかる。事業の規模によっては個人事業税も出てくる。
税金は、一種類ではない。何層にも重なってくる。
かかる費用を、一覧にしてみた
私個人の細かい金額は控えるが、賃貸経営で一般的にかかる費用を整理しておく。一般的な目安として、こういうものがある。
| 費目 | 一般的な目安 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 家賃収入の5〜10% |
| 修繕費・原状回復 | 家賃収入の5〜10% |
| 火災保険・地震保険 | 1棟あたり 年数万〜10万円台 |
| 消防設備点検 | 年3〜6万円(規模による) |
| エレベーター保守(ある場合) | 月3〜6万円 |
| 共用部の光熱費・空室時の電気代 | 物件により変動 |
| 建物清掃(外注の場合) | 物件により変動 |
| 管理委託費(委託する場合) | 家賃の5%程度 |
| 税理士費用 | 年5〜30万円 |
これらを合わせると、経費率は家賃収入の15〜20%が一つの相場だと言われている。つまり、家賃が10万円入ってきても、まるごと手元に残るわけではない。2万円前後は経営のために出ていく計算になる。
確定申告と、税理士という外注
当然、確定申告もしなければならない。
私は会社として税理士に顧問をお願いしている。確定申告だけを単発で頼むのか、普段から顧問として見てもらうのか。それによって金額は変わる。私の場合は後者だ。
ここで一つ、正直に思っていることがある。税理士費用というのは、結局のところ、自分でやれない労働を外注しているだけだ。お金を払って、人にやってもらっている。不労ではない。労働を、お金で誰かに肩代わりしてもらっているにすぎない。
修繕は、読めない
修繕費は、本当に読めない。
ここ数年、いろいろなものが壊れた。バランス釜は毎年のように寿命を迎える。給湯器、エアコン、配管。古い建物だから、どこが壊れてもおかしくない。
退去が出れば、原状回復の費用もかかる。深夜に水が漏れれば、その対応もある。
「年にいくら」と言えればいいのだが、それが言えない。読めないことそのものが、この仕事の難しさだ。来年いくら出ていくのか、私にもわからない。
建物の保険だけは、別の話
火災保険にも触れておく。
私は普段、保険というのはお金がない人のための備えだと思っている。お金で解決できる範囲なら、入らなくてもいい。そういう考え方もある。
ただし、建物の保険は別だ。金額が大きすぎて、何かあったときに自費では払えない。だから、これだけはみんな入っておいた方がいいと、私は思っている。
以前、退去後の部屋が汚損で大変なことになり、190万円かかったことがある。あのとき、建物の保険に破損汚損の特約がなければ、現金で190万円を出すしかなかった。保険に救われた。
空室と、最後の責任
忘れてはいけないのが、空室だ。人が入っていない部屋からは、家賃は一円も入ってこない。それでも、固定資産税はかかる。空室でも電気を通しておくことがあるから、その電気代もかかる。入ってこないのに、出ていくものはある。
建物の清掃を外注すれば、その費用もかかる。共用部の電気代もある。細々としたものを足していくと、思った以上になる。
そして、これは見落とされがちなことだが、建物には終わりがある。築年数が進めば、いつかは取り壊しを考えなければならない。ボロボロになった建物の責任は、最後まで大家にある。誰かが片付けてくれるわけではない。
だから、ちゃんと責任を持たないといけない。建物の最後まで考えると、これは資産であると同時に、重い責任でもある。
それでも、やる価値はある
ここまで書くと、大家業は大変なだけに聞こえるかもしれない。実際、楽ではない。
でも、私はこの仕事を否定する気はまったくない。覚悟があるなら、やればいい。人との関係が生まれるし、地域とのつながりもできる。資産として残るものもある。
私が言いたいのは一つだ。「不労所得だから楽に儲かる」と思って始めると、必ずつまずく。やっぱり、これは労働だ。手も足も頭も使う、れっきとした仕事だ。
最近はボロ戸建て投資のように、少ない資金で始められる方法も流行っている。お金はかからなくても、時間はかかる。自分でやれば時間がかかり、人に頼めばお金がかかる。その塩梅は、やってみないとわからない。
不動産投資をやるなとは言わない。ただ、始める前に、デメリットもちゃんと調べてほしい。それだけだ。
この記事は、築古5物件を自主管理する私自身の10年の経験をもとに書いています。表内の数値は一般的な目安であり、物件の規模・築年数・地域・設備により大きく異なります。具体的な税務や経費の判断は、税理士などの専門家にご相談ください。


















