家賃の滞納が続いている入居者がいる。電話をかけても出ない。月初を迎えても入金がない。こういう場面で、大家を救ってくれるのが家賃保証会社だ。

引き継いだ当初、私はこう思っていた。「保証会社なんて、どこでもいいだろう」。10年やってきて、それは間違いだった。7社を試して、最後にカーサに統一した経緯と、その途中で見えた業界の話を残しておく。


引き継いだ時、保証会社なんて入っていなかった

祖母から物件を引き継いだとき、保証会社という仕組みは一つも入っていなかった。当時は時代がそうだった。家賃は連帯保証人と、現金の手渡し。月末になると、入居者が直接お金を持ってきてくれる。それが当たり前だった。

この仕組みには、ある問題があった。私が物件にいないと、お金が回収できない。入居者の生活時間に合わせて、私が建物にいないといけない。仕事が増えれば増えるほど、回収のために動く時間が増えていった。

もう一つ、構造的な問題があった。直接受け取りだから、入居者がその月にお金を持っていなければ、その場で滞納が確定してしまう。手にお金を持っていれば、生活費に消える。「来月まとめて」と言われると、もう次の月にも持って来れない。ズルズルと滞納が積み上がっていく仕組みになっていた。


「保証会社を入れよう」、しかし「どこでもいい」と思っていた

これは良くないと思った。回収のための時間も、滞納のリスクも、自分で抱えすぎている。家賃保証会社を入れることに決めた。

そのときの私の認識は、こうだった。「保証会社なんて、どこでもいいだろう」。営業に来た会社を、片っ端から試した。仲介店にも任せた。仲介店からすれば、提携している保証会社を使ってくれた方が、営業上のキャッシュバックがあるのかもしれない。私はそこまで頓着していなかった。


7社、試してきた

具体的にどれだけの会社を試したか。覚えている範囲で並べる。

全保連株式会社、日本セーフティー、ナップ保証、フォーシーズ、エイブル保証、カーサ、ジェイリース。私が知る限り、これで7社になる。

保証会社7社試した道のり。全保連・日本セーフティー・ナップ保証・フォーシーズ・エイブル保証・カーサ★・ジェイリースの7社を試行。START(どこでもいい)→MAIN(日本セーフティー)→NOW(カーサに統一)。CASA選定理由:火災保険セット・24時間サポート・判断削減・リプラス後継

各社、入居者ごとにバラバラに使っていた時期がある。仲介店が連れてきた営業マンとの相性、その月の物件の事情、目の前の判断で次々に契約していった。「どこでもいい」と思っているのだから、当然そうなる。

結果として、私の建物の入居者は、各社に分散して契約されている状態になっていた。これが、後で大きな問題を引き起こすことになる。


困ったこと:判断負担、契約書の限界、火災保険の更新

1つ目の問題は、家賃の滞納が起きたときの申請の負担だった。当時は口座振替を採用していなかった。現金収納で運用していた。入居者から家賃が入ってこない月があると、私はまず「この入居者の保証会社はどこだったか」を調べる必要があった。

契約番号を確認して、その保証会社にFAXで申請する。名前と何月分の家賃を書く。それだけの作業のはずなのに、人間が「この人はどの会社だ」と毎回判断する必要があった。多くの入居者は滞納しないから、ほぼ覚えているけれど、それでも毎回考えなければいけないというのは負担だった。

このとき、私は強く思った。大家業は、人間が判断する回数を減らさないと回らない。判断する回数が増えれば増えるほど、ミスの確率も、自分の疲労も上がる。仕組みで判断を減らすほうが先だ、と。

2つ目の問題は、契約書に書いてあっても、それが必ずしも現実を救ってくれないということだ。火災保険に入ってください、と契約書に書いて、入居者に伝える。それでも、結果として入らない人がいる。こちらから連絡しないと加入してくれない人がいる。さらに、入ってくれた人でも、更新のタイミングで「もういいか」と更新してくれない人もいる。仲介店経由で紹介してもらった火災保険でも、結局は入居者次第だった。

3つ目の問題は、契約者が亡くなったり、逮捕されたり、夜逃げしたりした場合の対応だった。保証会社によって、こういう「契約者がいなくなった」場合の対応範囲が違う。「もう契約者がいないので、対応できません」と言われる会社があった。家賃保証だけでなく、その人が建物から出ていくところまで保証してくれるのが、自主管理大家にとっては本当にありがたい。これが各社で違うことを、契約してから知っていった。


日本セーフティーをメインに、カーサに乗り換えた理由

あるタイミングで、私は日本セーフティーをメインの保証会社に据えた。各社を試してきた中で、運用の安定感があったからだ。

そのあと、カーサが「火災保険とのセット契約」を始めた。さらに、24時間サポートとして、水道トラブル・ガラス割れ・鍵が開かないときの緊急対応がついてきた。これが大きかった。

火災保険を入居者個別に契約してもらうのは、本当に難しい。先ほど書いた通り、入らない人が出てくるし、更新もしてくれない。これを保証会社のセットにしてしまえば、入居者全員が自動的に火災保険に入っている状態になる。判断する回数が減る。

24時間サポートも、自主管理大家にとって価値が大きい。深夜の鍵トラブル、給水管の異常。一人でこれに対応するのは、年を重ねるごとに厳しくなっていく。専門業者に直接つながるサポートがついていれば、私が出ていかなくても済む場面が増える。

カーサに切り替えることを決めた。日本セーフティーから、カーサへ。建物全体の保証会社を、一斉に変更した。


過去にあった「保証会社が破綻した日」

保証会社を選ぶ上で、頭の片隅に置いていた事件がある。

2008年9月、株式会社リプラスという家賃保証会社が破産した。負債総額は約325億円。創業からわずか6年での破綻だった。当時はサブプライムローン問題で資金調達が難しくなっていた時期で、不動産関連の事業を抱えていたリプラスも、その影響を受けて資金繰りに行き詰まった。

この事件は、業界では本当に大きな衝撃だった。家賃保証をしている会社そのものが消えてしまうのだから、契約していた大家にとっては保証の根拠そのものが消える。代わりの会社を探して、入居者に説明して、新しい契約を結び直す。それを建物全体で一気にやらなければいけなかった。

大家にとって、保証会社が「家賃を保証してくれる存在」であると同時に「会社として倒産しない存在」であってほしい、という当たり前のことを、私はこの事件から学んだ。


カーサは、そのリプラスの後継会社だった

ここで、私の選択肢の話に戻る。私が最終的にメインに据えたカーサは、実はリプラスの破綻後、当時のリプラスの社員が後継として立ち上げた会社だ。家賃保証の業務を引き継ぎ、その後、東京証券取引所に上場するまで成長した(2017年に東証2部に上場、現在は東証スタンダード市場)。

つまり、私は「保証会社が破綻するとどうなるか」を一番近くで経験した会社の後継を、自分の建物のメインに選んだことになる。これは、私の中では妙な納得感があった。一度破綻を経験している人たちが、その教訓を持って再スタートしていると、私は受け取っている。財務面でも上場会社として情報開示が見える。安心材料の方が大きいと判断した。

もちろん、それでも保証会社の財務リスクはゼロにならない。2026年5月時点で見ると、カーサも財務面で少し気になる動きがある。直近の決算で経常利益の見通しが下方修正されたことが、上場会社として情報開示されている。一方で、全保連は財務の安定感が相対的にあると、私は感じている。サポート面も手厚いという印象だ。これはあくまで、私が現場で運用していての印象だ。


カーサにして良かった点と、後悔している点

カーサに切り替えてよかったことは、すでに書いた通り、火災保険のセットと24時間サポートだ。これは想定通りに機能している。

一方で、私が今でも気になっているのは、トラブル対応の連絡窓口が、私の使い方では一元化されていないことだ。カーサ内部にも、平日10時から15時の受付窓口と、24時間対応の別の電話番号がある。入居者からすれば、状況に応じてどこにかければいいのか分かりにくい。結果として、入居者は今までと同じように、私に直接連絡してくる。

「24時間サポートを使えるようになったから、私が深夜に動かなくて済む」という想定は、現状では半分しか実現していない。これは、契約する前には分からなかったことだ。実際に運用してみて初めて見える、現場の手触りだ。

もう一つ、運用面で気になるのは、家賃請求のシステムのUIだ。全保連や日本セーフティーは、契約者の一覧を画面で見ながら、必要な金額を入力していける作りになっている。一方、カーサは1人入力して送信、また1人入力して送信、という流れに近い。入居者数が多い建物では、一人ずつの繰り返し作業が地味に効いてくる。


それでも、カーサで行く

後悔している点があっても、私は今、カーサで行くと決めている。

理由は単純だ。保証会社を変更するのは、本当に疲れる。建物全体の入居者に説明して、新しい契約に巻き直してもらう。そのやり取りで、入居者にも戸惑いを与える。一度建物まるごとの保証会社一斉変更を経験した私は、二度目をやるエネルギーが、今のところない。

慣れることが、一番のメリットになる場面もある。完璧な保証会社は存在しない。どこを選んでも、何かしらの不満は出る。入居者も、こちらも、お互いに慣れた仕組みの中で運用しているうちに、その不満も折り合いがつくようになっていく。


タロウ哲学:変更は疲れる、慣れるが一番、判断を減らす

10年やってきて、保証会社選びから学んだことを3つに整理しておく。

一つは、最初から「どこでもいい」と決めずに、契約書に書いてあること以外の運用面まで見て選ぶことだ。火災保険セットの有無、契約者がいなくなった後の対応範囲、サポート窓口の数。これは契約してみないと分からないけれど、知っている人に聞ける範囲では聞いた方がいい。

二つは、変更は疲れるという事実だ。一度決めたら、慣れるまで使い切る。完璧を求めて何度も乗り換えるより、一つの会社で長く運用するほうが、結果として大家の手は楽になる。

三つは、人間が判断する回数を減らす設計だ。入居者ごとにバラバラの保証会社にしておくと、滞納が起きたときに毎回判断が必要になる。建物全体で一つに統一すれば、その判断は消える。判断する回数を減らすことが、自主管理大家の体力を守る。

「保証会社なんて、どこでもいい」と思っていた10年前の自分には、もうそうは言えない。


※ この記事は筆者の実体験と、2026年5月時点の所感をもとにしたものです。各保証会社の最新の財務状況・契約条件・サービス内容については、必ず各社の公式情報をご確認ください。リプラスの破綻に関する記述は公開されている報道・破産記録に基づきます。具体的な契約判断は、宅建士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。

ABOUT ME
大家のタロウ
はじめまして、大家のタロウです。 相続でひょんなことから大家になって、もう10年が経ちました。最初は右も左もわからないまま、ずっと手探りでやってきました。 失敗も、焦りも、「え、こんなことが起きるの?」って出来事も、たくさん経験してきたので、せっかくだから記録しておこうと思ってこのブログを始めました。 難しいことは書けませんが、同じように悩んでいる大家さんの「あるある」や「参考」になれたら嬉しいです。よろしくお願いします。