管理会社に断られた。理由は貯水槽の場所だった

大家は選ぶ側だと思っていた。今日、選ばれる側になった。
今日、管理会社に断られた
今日、管理会社に管理委託を相談に行って、断られた。
きっかけは、自分の体調だった。
大家業は24時間の仕事だ。入居者からの電話は時間を選ばない。水漏れ、鍵の紛失、騒音、滞納の交渉。どれも重い案件だ。体調が悪い日、疲れ切った日に、深夜の電話を取って現場に向かうのは、正直もう限界に近い。
だから、管理会社に「一次受け」だけでも頼みたかった。入居者からの連絡窓口を誰かに引き受けてもらう。そこから先の現場判断や修繕の手配は自分でやっていい。電話とメールの最初の受け皿だけ、外に出したかった。
持っている物件は、4棟と戸建て1軒。すべて築30年から50年だ。誰もが飛びつく物件じゃないのは、自分でもわかっている。
それでも、伝えたかったことがあった。
「今後、建て替えも視野に入れています。建て替え後も一緒にやっていける、そんなパートナーを探しています。長いお付き合いができる人を探しています」
持ち込んだ相手は、業界大手だった。声をかける時点で、ダメだろうとも思っていた。私が相手側なら断るだろう、とも。でも担当してくれた人が、物腰の柔らかい、頼れる感じの人だった。話しているうちに、「この人と一緒にやっていきたい」と本気で思った。
「基本的には、費用が高くなっても、御社にお願いしようと思っています」。そのスタンスで伝えた。
理由は、貯水槽だった
結果は、断りだった。
理由はこうだった。
「物件の貯水槽が、入居者の部屋のベランダにあります。もし何かあった際に、うちの人間が行けません。そういう構造の物件は、一律でお断りさせていただいています」
正直、最初は思った。本当かな。断り文句じゃないか。
ベランダにある貯水槽に、いざというとき行けない。それは確かに管理側のリスクだ。わかる。でも、一律で断るほどのことか、という気持ちがあった。
でも、自分を相手側に置いてみると、同じ判断をしただろうと思った。
管理会社は、受けた物件の一つひとつから利益が出ることを望んでいる。そして、今後トラブルが大きくなる予感のある物件、リスクの読みにくい物件は、会社の存続を考えると受けない方がいい。一律ルールを引いて、人情で例外を作らない方が、組織としては健全だ。
私が相手側なら、断る。
築30年から50年、4棟と戸建て1軒、貯水槽がベランダにある古い構造。この条件で「長い付き合いがしたい」と言ってくる大家がいたら、大手の担当は社内稟議で通せない。会社として確実に利益が読める案件ではなく、むしろトラブルが大きくなる気配のある案件だ。
大手が欲しいのは、将来にわたって安定した利益を生む物件だ。「長く付き合いたい大家」ではない。
そのずれが、今日の断りの正体だった。
タロウの学び
大家は選ぶ側だと、無意識に思っていた。
家賃を決めるのは大家。入居者を選ぶのは大家。修繕を依頼するのは大家。契約を結ぶのも、切るのも、大家の判断。そう思ってきた。
でも、管理会社に物件を持ち込んだ瞬間、立場は反転する。向こうが「受ける、受けない」を決める側になる。こちらは提案する側、選ばれる側になる。
これは、物件の条件によっては避けられない構造だ。築浅、立地最高、入居者満員、家賃も市場価格。そんな物件なら、管理会社のほうから取りに来る。一方で、築古、地方、インフラが古い。そういう物件は、選ばれにくくなる。
私の物件は、後者だ。
もうひとつ、今日学んだことがある。
担当者個人の信頼と、会社としての判断は、別物だ。
今日会った担当の方は、「この人と一緒にやりたい」と本気で思える人だった。人として信頼できた。でも、その担当が気に入ってくれたとしても、会社の一律ルールの前では、個人の判断は通らない。大手であればあるほど、ルールは固い。ルールが固いから大手でいられる、とも言える。
そして、もうひとつ気づいた。
「長い付き合いをしたい」という私の願いそのものが、大手の評価軸には入っていなかった、ということだ。
大手が評価するのは、契約期間中の収益の安定性だ。建て替え後の30年を一緒に歩きたいかどうか、ではない。その先を見据えたパートナーシップは、地場の中小規模の管理会社や、大家同士のコミュニティの中で探した方が、おそらく筋がいい。

今日、大手に断られた。でも、断られたことで、自分が次にどこを叩きに行くべきかが、少し見えた気がする。
築30年から50年の4棟と戸建て1軒を持つ大家として、私は今後も「選ばれる側」であり続ける。その前提を忘れずに、次の扉に手をかける。
大家のタロウの失敗図鑑に、今日の話をまた一頁書き足した。
















