戦争で防水工事ができない。雨漏りを直したいのに材料が届かない

「知ってたんじゃないですか?」
入居者の第一声は、これだった。
築30年のアパート。窓枠から雨漏りしていた。私が気づいたのは、入居者が住み始めた後だった。空室の間は何度も見に行っていたけれど、行くのはだいたい晴れの日だ。雨の日にわざわざ空室を見に行く習慣がなかった。だから数年間、気づかなかった。
知っていたなら伝えるし、そもそも入居させない。でも入居者からすれば、そうは思えないのだろう。すごく責められた。
気持ちはわかる。でも、知らなかったものは知らなかった。
1箇所目は直した。でも2箇所目が残った
すぐに工務店に依頼して、原因がはっきりしている1箇所目を修理した。
ところが工務店がこう言った。「ここからも雨漏りしてますね」
2箇所目。こちらも直したかった。でも予算が足りなかった。防水工事は安くない。借金して工事をして、それが返せなかったら何のためにやったんだろうとなる。だから後回しにするしかなかった。
1年後、再び連絡が来た
それから1年ほど経って、入居者から再び連絡が来た。
「雨漏りしています」
1年間雨漏りがなかったのか、あったけど我慢していたのか、それはわからない。ただ、再び連絡が来たということは、状況が悪化しているということだ。
今度こそ、ちゃんとやらなければ。窓枠のコーキングの確認と、屋上の防水工事の見積もりを工務店にお願いした。
見積もりは出た。「いつできますか?」「わかりません」
見積もりが出た。金額は数百万円。覚悟していた範囲だ。
問題は金額じゃなかった。
「で、いつ工事できますか?」
「わかりません」
原因はアメリカとイランの戦争
防水工事には、塗料やシンナーなど石油由来の材料が必要だ。

アメリカとイランの情勢が悪化して、石油の流通が滞っている。防水工事に使う材料が現場に届かない。見積もりは出せるが、いつ材料が入るかわからないから、いつ工事できるかもわからない。
国は「数は足りている」と言っている。でも現場には届いていない。お米のときと同じだ。「供給は足りている」と言いながら、スーパーの棚は空っぽだった。あれが落ち着くまでに数年かかった。今回も同じことになると思っている。
しかも防水工事は梅雨の時期を避けたい。塗る作業だから、雨が続く時期にはできない。梅雨までに材料が入るかどうかもわからない。タイミングがどんどん狭まっていく。
大家仲間からは「再見積もりで4倍」の声
大家仲間に聞いたら、もっとひどい話があった。
大規模修繕を依頼していた大家さんが、同じように延期になった。出てきた再見積もりは、最初の金額の4倍。
材料費が高騰して、業者も仕入れ値が読めないから、リスクを乗せた金額を出さざるを得ない。延期された上に金額も跳ね上がる。二重苦だ。
私の見積もりも、当初の金額ではもうできないと言われた。再見積もりの金額はまだ出ていないが、上がることは間違いない。
入居者にどう伝えるか
これが今、一番の問題だ。
「戦争の影響で材料が届かないので工事できません」。正直に言えばそうだ。でも入居者にとってはそんな事情は関係ない。目の前の雨漏りを直してほしい。ただそれだけだ。
最初に「知ってたんじゃないか」と責められて以来、関係は良くない。連絡があるのはトラブルのときだけ。そこに「国際情勢のせいです」とは、言いにくい。
でも言わなければいけない。
今できることとして、業者から提案されたのは屋上にシートを敷く応急処置だ。ただ、以前も同じことをやって普通に雨漏りした。正直、当てにはしていない。でもそれしかない。
「応急処置としてシートを敷きます。本格的な防水工事は、材料の供給が安定し次第やります」。伝えられるのは、それくらいだ。
雨の日は眠れなくなった
入居者のことを考えると、申し訳なくて。
雨漏りに気づかなかったのは自分だ。予算がなくて2箇所目を後回しにしたのも自分だ。そして今、直したくても直せない。理由は戦争。自分ではどうしようもない。
何とかしてあげたいという気持ちだけはずっとある。でも気持ちだけでは雨漏りは止まらない。
大家業を10年やってきて思うのは、何をするにも3つのものがいるということだ。お金と、情報と、動いてくれる人。今回はお金は何とか用意できる。情報は大家仲間から得られている。でも、工事をしてくれる業者が材料不足で動けない。3つのうち1つでも欠けると、物事は止まる。
モンスターカード No.008「停滞の魔人」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | コスト魔人 |
| 被害 | 雨漏り修繕の長期延期/材料費高騰による見積もり上昇 |
| 原因 | アメリカとイランの情勢悪化による石油流通の停滞 |
| 対策 | 応急処置(屋上シート)で一時しのぎ/材料供給の回復を待つ |
| 教訓 | 修繕費の現金は常にプールしておく/空室は雨の日にも点検する/大家仲間の情報はネットより早い |
この記事を書いている今も、工事の目処は立っていない。いつ材料が入るかわからない。いつ工事できるかわからない。入居者への伝え方も、まだ正解は見つかっていない。
解決していない話を記事にするのは初めてだ。でも、同じように困っている大家さんは全国にたくさんいるはずだ。この記事は、続報が書けるようになったら更新します。
※ この記事は2026年4月時点の状況をもとにしたものです。国際情勢や材料価格は変動する可能性があります。特定を避けるため、一部の情報を変更しています。修繕の判断は専門家にご相談ください。
