私は、築古の5物件、合わせて15部屋を自主管理している。

そのうち、90代の入居者が2人いる。最高齢は、95歳だ。

入居者の高齢化は、引き継いだときから意識してきた。というより、高齢の方に住んでもらう前提で、やってきた。今日はその話をする。

物件を引き継いだとき、考えたことがある。この建物に、誰に住んでもらうのか。

うちのアパートの風呂は、バランス釜だ。浴槽の隣に点火式の給湯器がついていて、火をつけて使う。今の若い人は、まず使い方を知らない。設備をどんなにきれいにしても、風呂が若者向けにならない。

この風呂の使い方が分かるのは、昔の団地に住んでいたような人たちだ。

だから、若い人を呼び込んで長く住んでもらうことは、諦めた。高齢者向けで、どんな人でも基本的に受け入れていく。そういうスタンスに決めた。

誤解しないでほしいのは、「高齢者を断らない方針に変えた」わけではない。もともと、断るつもりがない。弱者と呼ばれる人たちを、受け入れられるなら受け入れたい。地域のためにもなるし、それがめぐりめぐって、うちのためにもなると思っている。

うちの入居者は、住んだら大体10年以上、居てくれる。

長く住んでもらえるのは、ありがたい。ただそれは、入居者が建物と一緒に歳を重ねていく、ということでもある。20歳で入った人が、気づけば40歳になっている。

15部屋中、90代が2人。最高齢は95歳。これが、築古アパートの現実だ。

高齢化が進む中で、私が変えたことが一つある。家賃の集め方だ。

引き継いだ当初、家賃は手渡しの人がいた。私が集金に行く人もいれば、事務所に持ってきてもらう人もいた。

それが、コロナで変わった。事務所にいることができなくなった。集金にも行けなくなった。それでも、家賃は集めないといけない。

それに、前から疑問に思っていたこともあった。家賃の集金は、私がやらないといけないのか。1人でやっているからこそ、どうしても属人化する。属人化するということは、私が急にいなくなったとき、困る人たちがいるということだ。

だから、口座振替に変えた。

これが、高齢の入居者にとっても良かった。家賃をずっと持ってきてくれていた人たちが、高齢になって、足が悪くなったり、車を手放したりして、なかなか来られなくなった。それでも、家賃は口座から引き落とされる。水道代や町内会費のようなものも、足が悪くて払いに行けない人から、こちらから請求して払ってもらうことができる。

集金の属人化をなくすつもりで変えたことが、結果として、歳をとった入居者の暮らしを支える形になった。これは、すごく良かったと思っている。

もう一つ。身内の方の有無は、結構確認するようにしている。

契約のとき、緊急連絡先として聞いている。身内がいない人もいる。身内はいるけれど、もう連絡を取っていない、連絡したくない、という人もいる。

それでも、もし部屋の中で人が亡くなって、物が残ってしまったら、大家は対応しないといけない。その身内に、連絡を取らないといけない立場になる。だから、部屋の中のものをこちらで処分してもいいか、という一筆は、最初にもらっておきたい。

一方で、入居者への対応そのものは、大きく変えていない。

90代の2人とは、昔からの知り合いだ。顔を合わせれば、「お元気ですか」「お体どうですか」と、こちらから声をかける。「もう横になっているだけだよ」。そんな返事が多い。

95歳の方は、足腰の強い人で、結構ハキハキしている。ただ、耳が遠い。だから、大きな声で話す。それくらいだ。

90代のうちの1人は、私が昔、同じアパートに住んでいた頃からの付き合いだ。一人暮らしだった私は、その人にご飯を分けてもらっていた。とても助かった。

そういう人たちが、いま、うちの入居者として歳を重ねている。特別なことはしていない。声をかけて、様子を気にかける。それだけだ。

高齢の入居希望者を、どこまで受け入れるか。迷う大家さんは多いと思う。

私の場合は、保証会社が通ることが前提。それが通れば、基本的に受け入れる。

高齢だから審査が通りにくい、という印象は、私にはない。もともと住んでいた方の審査は、すんなり通った。年金暮らしの方でも、生活保護を受けている方でも、通っている。

それから、困ったことがあったら、区役所に行って相談する。私も、入居者のことでケースワーカーと話しながら進めてきた

一度、こんなことがあった。生活保護の方には、水道代の免除が適用される場合がある。うちの入居者が当てはまっていると判断して、区役所に行った。「実際に、当てはまっています」と言われた。ただ、本人からの申請でないとダメだと言う。その本人は、もう声が出ない。どうすればいいかと聞いたら、「声が出ないのも、分かっています」と。

すごくモヤモヤした。お役所仕事すぎないか、と思ってしまった。もっとも、本人は「いいわいいわ、水道代ぐらい払うわ」と言っていた。私が勝手にやったことなので、お役所仕事だと上から言うのも、おかしな話ではあるのだが。

入居者の高齢化は、止められない。でも、備えはできる。

変えたのは、家賃の集め方のような仕組みの部分。変えていないのは、人との距離感。私は、この組み合わせでやっている。

ABOUT ME
大家のタロウ
はじめまして、大家のタロウです。 相続でひょんなことから大家になって、もう10年が経ちました。最初は右も左もわからないまま、ずっと手探りでやってきました。 失敗も、焦りも、「え、こんなことが起きるの?」って出来事も、たくさん経験してきたので、せっかくだから記録しておこうと思ってこのブログを始めました。 難しいことは書けませんが、同じように悩んでいる大家さんの「あるある」や「参考」になれたら嬉しいです。よろしくお願いします。