うちの物件に、期限が決まっている工事がひとつある。

TRビルの3B。天井に、蛍光灯が16台ついている。東芝のFA42006K-Rというグロー式の器具で、製造は1981年3月11日。私が生まれるより前の器具である。

これを全部、LEDに替えなければならない。理由は老朽化ではない。蛍光ランプそのものが、作られなくなるからだ。

そして今日の本題は、その工事が1台も進んでいない、ということである。

期限は、種類によって1年ちがう

2023年11月、水銀に関する水俣条約の締約国会議で、一般照明用の蛍光ランプの製造と輸出入を廃止することが決まった。世間で「蛍光灯の2027年問題」と呼ばれているものだ。

ただ、環境省の資料を読んでみると、期限は一つではなかった。種類によって1年ちがう。

電球形(30W以下)は、2026年1月1日から禁止。これはもう始まっている。コンパクト形は、2027年1月1日から。直管形と環形は、2028年1月1日からで、つまり2027年いっぱいは作られる。

ただし直管形・環形でも、ハロりん酸塩系の蛍光体を使ったものは2027年1月1日から。こちらは1年早い。

自分の建物がどちらなのかは、ランプに書いてある型番で見分けられる。FL40SS・EX-N のように「EX」が入っていれば三波長形で、期限は2028年。入っていないものは、ハロりん酸塩系の可能性がある。心配なら、型番をそのままメーカーのサイトで調べるのが早い。

もう一つ、大事なことがある。禁止されるのは製造と輸出入であって、使用と販売と購入は禁止されない。今ついている蛍光灯は使い続けていいし、店に在庫がある間は買える。

つまり、期限が来た瞬間に部屋が暗くなるわけではない。じわじわと、替えのランプが手に入りにくくなっていく。この「じわじわ」が、後で効いてくる。

準備は、ほとんど終わっている

私の側の話に戻る。

まず、資格は持っている。大家になってから第二種電気工事士を取ったので、この工事は自分の手でできる。人にお願いしなくていい。

器具も決めた。東芝のTENQOOで、セット品番はLEKT423693N-LS9。40形の直付タイプで、幅は230mm。今ついている器具が220mmなので、10mm広い。天井に残る古い器具の跡が、ほぼ隠れる。

値段も分かっている。1セットで約1万2,000円。16台だと19万円ほどになる。

そして、テスト用に1セットだけ先に注文した。届いている。

ここまでで、揃っていないものはない。

それでも、1台も替えていない

最初に止まったのは、部材だった。

器具は買ったが、結線に使う差込形コネクタが足りなかった。器具の箱を開けても、こういう消耗品は入っていない。「器具を16台」と数えても、それだけでは工事は始まらないのだ。

次に止まったのは、もっと基本的なことだった。

3Bは空室で、電気を開通させていなかった。当たり前の話だが、電気が来ていない部屋では、LEDを取り付けても点くかどうか確認できない。テスト用に買った1セットは、いまだに点灯確認すらできていない。

だから今の私の「次の一手」は、器具の交換ではない。電気の開通手続きである。

止まる理由が、一つ片づく前に次から次へと出てくる。そう書くと不運のように見えるけれど、実際は違うと思っている。本当に急いでいたなら、電気が通っていないことには最初の日に気付いたはずだ。

隣の部屋は、入居者が替えていった

3Bの隣に、3Aがある。

そこはもうLEDになっている。私が替えたのではない。以前入っていた方が、自分でLEDの器具を買って交換して、退去するときにそのまま置いていってくれたものだ。

私が3Bで使おうとしている型番も、もとはといえば3Aに合わせたものである。入居者が選んだ器具に、大家が後から揃えている。

ありがたい話である。ありがたい話なのだが、こうして並べて書くと、なかなかこたえるものがある。

期限が遠い仕事は、後回しにできてしまう

なぜ動かないのか、自分でも考えてみた。

答えははっきりしていて、後回しにできてしまうからだ。

大家の仕事には、後回しにできない種類のものがある。深夜に水が漏れた。ガスが止まった。鍵をなくした。こういう連絡が来たら、その日のうちに動く。動かないと、目の前で困っている人がいるからだ。

一方で、3Bの16台は、今日替えなくても誰も困らない。空室だから入居者もいない。期限は1年以上先である。今日やらない理由なら、いくらでも作れる。部材が足りない。電気が通っていない。どちらも本当のことだ。本当のことなので、なおさら止まっていられる。

この仕事が「不労所得」と呼ばれることに私が違和感を持つのは、たぶんこのあたりだと思う。誰にも催促されない仕事が、期限だけを持って積み上がっていく。締め切りを決める人が、自分しかいない。

資格を取ったときは、受験料を先に払って退路を断った。今回は、それをやっていない。

同じ状態の大家さんは、少なくないと思う。まだ点いているのだ。まだ点いているうちは、動かなくていい理由がある。

とりあえず私は、電気の開通から始めることにする。16台を替えるより、ずっと小さい話だ。

※電気工事は、資格がないとできない作業が法律で決められています。照明器具の交換も、配線を結線する工事は資格が必要です。実際の工事は、資格を取ってから、資格の範囲内で。それが一番の前提です。

ABOUT ME
大家のタロウ
はじめまして、大家のタロウです。 相続でひょんなことから大家になって、もう10年が経ちました。最初は右も左もわからないまま、ずっと手探りでやってきました。 失敗も、焦りも、「え、こんなことが起きるの?」って出来事も、たくさん経験してきたので、せっかくだから記録しておこうと思ってこのブログを始めました。 難しいことは書けませんが、同じように悩んでいる大家さんの「あるある」や「参考」になれたら嬉しいです。よろしくお願いします。